3月15日にやってきた てっぺい。

生後3ヶ月と3週間。
籠の中から出てきた てっぺいは、思いの他大きくて、驚いた。
黒くてチビスケの私が思い描いていた細いヨーキーパピィは、生後2ヶ月余り。ショップで初めて抱いたパピィがそうだった。
でも、ヨーキーパピィは、嘔吐や下痢、食欲不振なんてことが、あるらしく、我が家じゃそんなチビスケは無理やもしれぬと判断。そこで、月齢の大きくて可愛いパピィを求めることに趣旨がえをした。あれこれ、電話をかけてパピィ情報を確認。問い合わせていたブリーダーさんを丁寧にお断りして、契約したのが、この「てっぺい。」
頭の毛が少なくて、もう白くなってきている。
じっと、私の目を見つめて、一言も鳴かない。
私の持参したハウスに、てっぺいを入れて、車にエンジンを駆ける。そろそろと発進した。ショップの方は、BMBで颯爽と消えてしまった。
ハウスの中で、てっぺいもどきどきしているんだろうが、私も、何十年来の夢が叶った瞬間。胸すくむ思いで、アクセルを踏み込む。その時だ。
「あっ、ブレーキランプがついている!」と、フットブレーキを踏む。
「きき〜っ、どすっとんとん!」ハウスごと、てっぺいが落っこちた。
「ぎゃあ。ど、どうしよ。足折れていないかな?頭、打っていないかな?」 喉がひりひりして息苦しい。「と、とにかく、どこかで、車内を整えて、てっぺいのハウスが落ちないようにしなくっちゃ」
 高速インターから発進して、5メートルのところで、止まったままの私の車に後部車が、もっと、前で停車せよ!とクラクションを鳴らす。
 「そんなこといっても、こっちは、動揺してんだから、待ってください。」声にもならぬ 声で つぶやく。辺りは、大型店舗が並ぶ幹線道路だ。気を取り直す暇もないが、とにかく、近くの駐車場に入る。
「・・・うん? うん・・・??臭う。」

「おならをしたのかい?」
怪我でもしていたら、大変と、ハウスからそっと、てっぺいを出してみる。
されるがままになって、くりくりの瞳で私を見上げている。
「なんと 麗しいおメメでしょう。」こっちの目まできらきらしてくる・・が、ふとハウスを覗くとそこには、相当のうんPが。
ハウスが転がった瞬間に てっぺいは、驚いて 粗相をしてしまったのだ。「お前え〜臭いでしょうがあ」動悸で息苦しい私は、てっぺいのばつの悪い顔が愛おしくて、それと同時に大量のうんPと初めての匂いのお陰で緊張が解けていく。何だったの?ときょとんと静かに私の腕の中にいるってっぺい。
「こいつ、早速、やっちゃったね。」

それから、私は、車の座席を動かし、シートベルトで、ハウスを固定。
てっぺいの顔がみられず、切ない1時間弱。しかし、交通事故でも起こしたら、私の人生もここで終わり。頂点極めて(憧れの仔犬を手に入れて)死ぬわけにはいかぬ。心を強くし、前方集中。高速インターを降りて、かれこれ10分。やっと我が家に到着。駆け足気味を押さえて、押さえて、玄関を開ける。そっと、ハウスを2階居間へ運ぶ。
ハウスの入り口を開けてやると、のそのそと出てきて、私のにおいをかぐ。
抱いて膝の上へのせる。じっと、そのままにしてい・・る・・ 今日一晩、ハウスかゲージでそっとしておきましょう・・・って本にも書いてあったし。静かにさせてやらなくちゃ・・・????

ヨークシャテリアという上品で静かなシツナイケンは、私に背中をなでさせ、ぐるぐると喉を鳴らした。私は飼い主になった喜びをかみ締めていた。が、しかし、それは、ほんの数分でしかなかった。
3分も座っていただろうか。床に下ろしてみたとたん、飛び上がって、じゃれてきた。3センチ足らずの短い尻尾を切れんばかりにフリ切って、跳ねまくり、走りまくり、ころげまくり・・。
「なんて、元気な奴なんだ!こんなに元気に走り回るものなの?変だよ。本と違うし。」
しばらく、眺めていたが、いつもの食事の時間、夕方6時が過ぎていることに気がついて、貰ってきたフードを食器に入れて、ゲージに置く。
彼は、そそくさとゲージへ。
しかし、後ろ足が、ゲージの外で踏ん張っている!(ゲージに入ると閉じ込められると思っているらしい)
「ほうほう、こんなふうに飼われていたんだな。」本人の癖や習性を観察。観察。みるみるうちに、フードがなくなる。ぺろりと舌を出したかと思うと、まだちょうだい! 丸い瞳で、見上げてくる。なんという食欲!緊張して、食欲が落ちるって、てっぺいに限っては、ありえないことだった。

 そこへ、娘1が、そっと顔をのぞかせる。
 彼女をみつけた てっぺいは、入り口までダッシュ!とととっと近寄っていって、大はしゃぎ。身体をよじって、ぺろぺろなめて、走って、戻って、体当たりして。。体中で喜びを表現しているみたい。・・・こいつ、どんな奴なんだ! 
 初めて来た家で、初めて見る人間に恐れひるむ事無く、人間大好きわんこだった。初日から、食欲旺盛。ドッグフードの袋には、1日80グラム程度と書いてあるのに、どんどん食べる。ほしがる。大きくなりそうだなあ。3キロ以内がいいんだけど。あまり 食べさせない方がいいかな?
 てっぺいは、我が家が準備したフードより、ブリーダーさんが食べさせていたフード(1日分だけ頂いた)の方が喜んで食べる。早速、ネットで、注文。食べてくれないと、身体が弱るからね。
 そんな心配も、今となれば、余計な心配だったんだけど、そのときは、たくさん、美味しい物を食べさせてやらなくちゃ。親心でありました。